MY FAVORITE FREE FONTS in 2015

TAKAYA OHTA
6 min readDec 26, 2015

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Mediumはずいぶん前に登録して以来放置していたのだけど, 先日のロゴ刷新 (日本語訳)でロゴのデザイン・プロセスやロゴに込められた思想を読んでいると, Mediumのことが急に気になりだしたので試しに書いてみようと思う。

少し堅めのエントリは自身のポートフォリオ・サイトに書く予定なので, Mediumではもう少しライトなものを。

フリー・フォントとの出会い

今日は「2015年にリリースされたお気に入りのフリー・フォント」について書いてみようと思う。その前にせっかくMediumで書くのだから, みんながそうしているように僕とフリー・フォントのストーリーも書いてみたい。

僕はフリー・フォントが大好きだ。学生時代, デザインをはじめたばかりの僕にはシェアウェア・フォント (有償フォント) を買うお金がなかった。大学の先輩から「フォントにも無償で使えるものがあるんだよ」ということを教えてもらい, さっそくfontsquirrelのようなフリー・フォントを扱っているサイトでいくつかのフォントをダウンロードしてデザインに使ってみることにした。

驚いた!
フォントを変えるだけでデザインの印象がこんなにも変わるなんて。
当時はデザインの知識が全くなかったので, 書体選びもMacに標準で入っているフォントから行っていた自分にとって, これはとても衝撃的な出来事だった。(HelveticaやAvenir, GaramondやDidotなど, Macにプリインストールされている書体の豪華さも恐ろしいが)

フリー・フォントと出会ったことで僕は文字の面白さや奥深さを知り, 欧文書体の収集に没頭するようになった。

マイ・フェイバリット・フリー・フォント 2015

前置きが長くなってしまったが, 今年リリースされたフリー・フォントの中から個人的に良いと感じたフォントを紹介したい。

AQUATICO
丸みのあるジオメトリック・サンセリフ。「A」や「K」,「Q」に見られる印象的なシルエットは海底の生物から着想を得たそう。ジオメトリック・サンセリフはフリー・フォントでも質の高い作品が多い一方で幾何学的な構成であるがゆえに書体間の差異を見い出しづらいこともある。しかしながらAQUATICOは独自のコンセプトとデザインを結びつけ, 特徴的なシルエットに仕上げられている。

arciform
こちらも丸みのあるジオメトリック・サンセリフ。丸みがとても強く, 字の組み合わせによってはなかなかキマらないこともあるが, キマった時の可愛らしさが凄く良い。

Reef
「AQUATICO」「arciform」に続いてラウンデッド・サンセリフだが, 3-4年前から流行の兆しがあったコンデンスド (長体) の要素を組み合わせているところが面白い。意図的だろうか, 各文字の持つラフ感もこの1-2年のトレンドである手書き風フォント/タイポグラフィを思い起こさせるような可愛らしさを演出している。このように複数の書体の特徴や流行を積極的に取り入れたフォントに出会えることがフリー・フォント探しの醍醐味だと思う。

Summer (Lightのみ)
2013–2014年は有償・無償フォントともに様々なタイプの手書き風フォントがリリースされた。その中でもレトロ/ビンテージなビジュアルにハマるフォントが目立ったが, 2015年は柔らかな線で描かれた手書き風がトレンドの1つだったのではないだろうか。(僕はあまりHandwritten fontは使わないが, 「Showcase」はあまりにも可愛すぎて衝動買いしてしまった!)
「Summer」はそのようなトレンドの中で流行直球ド真ん中のフォントというわけではないが, ともすれば安っぽい雰囲気になりがちな手書き風フォントに絶妙な抜け感を加えることで “手書き風フォントの良さ” を上手く出していると感じた。

Genome
ニュートラルなサンセリフ。今年は仕事でもベーシックなサンセリフ・フォントを使ってロゴや文字を組むことが多く, この手の書体もよく見るようにしていたのだが, 「Genome」にはシェアウェア・フォントも顔負けの美しさを感じた。基本的にはニュートラルでありながら全体的にわずかに丸みを加えることで「今っぽさ」を演出しており, Webフォントとして文章に用いることでデザインのワンポイント・アクセントになる。可読性に念頭を置き設計された細めの書体はフラット・デザイン/マテリアル・デザイン時代のインターフェイスとの相性も良さそうだ。

2015年も数多くの魅力的なフリー・フォントがリリースされた。他にもお気に入りのフォントはあるが, 今日は特に記憶に残っていた5つのフォントを紹介した。ジオメトリック・サンセリフだと他には「Coco」「Moon」も可愛いなあと思った。セリフの名残りが特徴的な「Nord」も可愛い。「Gadaj」のゴロンとした独特なシルエットも可愛い。

フリー・フォントの良さは自由で独創的な作品がリリースされる (そしてそれらを気軽に試すことができる) ところにあると感じている。無論, 著名なフォントにも各々魅力的な特徴があるが, プロユースとして可読性や汎用性に重きを置くことが多く, トレンドをいち早く取り入れたり実験的・先進的なデザインを数多く見られるのはフリー・フォントならではの良さと言えるだろう。

デザインでお金を頂くようになってからは著名なフォントや昔から欲しかったフォントを少しずつ買い揃えていった。その後はMyFonts.comのようなプラットフォームで独立系のフォント・ファウンダリや書体デザイナによって制作された個性と品質を兼ね備えたフォントを収集しながらフリー・フォント探しを続けている。来年はどんな素敵なフリー・フォントが現れるだろうか, 今から楽しみだ。

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TAKAYA OHTA

DESIGNER / Art Director : 沖縄県出身, 県立コザ高校, 立教大学経営学部, 今はデザインをする仕事をしています。 趣味は欧文書体の収集です。: http://TAKAYAOHTA.com