僕がデザインをするのが好きな理由

TAKAYA OHTA
8 min readJan 30, 2016

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2016年1月末をもって2年間在籍したデザイン事務所 monopo を退職した。

僕は普段 Twitter (@198Q) をよくやっているのだが, デザインや仕事についてツイットすることはあまりないので, 今日はそういったことについて書こうと思う。

デザインを始めたきっかけ

デザインとの出会いは大学のフリーマガジン・サークルだった。勧誘してきた先輩がとびきりに可愛かった。田舎から出てきた19歳の僕はすっかり良い気分になり, ふたつ返事でそのサークルに入ることにした。

失敗したと思った。そのサークルは高校時代に新聞部だとか文芸部だとか, そういう部で活動していた人たちが明確な目的を持って集まっていた。僕は勧誘を受けるまで “フリーマガジン” の存在すら知らなかった。

僕は他に希望者のいないデザイン担当に配属された。幸運なことに例の可愛い先輩はデザイン担当だった。先輩を失望させたくないという一心でAdobeの操作を頑張った。

自分が携わった冊子を配布したとき, デザインをすることの楽しさを知った。学部の同級生を見つけて冊子を渡すと「オオタくんってこんなこともできるの!」と褒められた。

大学以前の僕には何も無かった。中学と高校は家の近所にあり, 部にも属さず, 学校と家を行き来する6年間を過ごした。このまま半径 5km 以内の人生が続くのか思うと急に恐ろしくなって, 何かを得たくて東京へと逃げた。

だからフリー・マガジンを読んだ友人から褒められたときにはとても嬉しかった。その時が初めてなんじゃないかと思うくらい, 他人に褒められたのはとうの昔のことだった。小さいころからモノを並べることが大好きだったからレイアウト作業も楽しかった。これを続ければ何かを得られる気がして僕はデザインに没頭していった。

新卒で入社したデザイン事務所

途中で転部はしたものの, フリー・マガジンの制作活動は4年間続けた。その間「mamari」を運営する Connehito の立ち上げにデザイナとして参加したり, 個人でロゴデザインやWebデザインの仕事したり, デザイン漬けの大学生活を送った。気が付くと卒業年の新卒採用は終了していた。

幸いなことにいくつかのデザイン事務所から卒業後はうちへ来ないかというお誘いを頂いた。そのうちの1社が monopo だった。

パートナーとして働きはじめたとき, monopo は CrowdWorks から間接的に仕事を請け負う時期から, クライアントから直接仕事を請け負う時期への移行期だった。事務所のブランディングにはほとんど手が付けられていなかった。

僕はそこに面白さを感じた。これからきっと伸びていくだろう事務所に自身の爪痕を残す余地が沢山あるというのは, すでに存在を確立しつつある事務所に入社するよりもずっと魅力的に映った。まだ作りかけの青写真を僕も一緒に描きたいと思った。

結果的に僕が在籍した2年間で事務所は急成長した。「無謀では」と口にしたくなる代表・佐々木氏の年間計画は毎年クリアされるし, オフィスは小さなアパートの1室からルーフトップのある洒落た建物に移転した。もう1人のアートディレクタ・亀田氏と副代表・岡田氏はスパイクス・アジアに日本代表として出場した。

僕はファースト・キャリアがこの事務所で本当に良かったと思っている。友人のように接し, プロとして力を合わせながら, 今日までデザインをしてきた。成功することもあれば失敗することもあった僕の変則的なデザイン・アプローチも暖かく見守ってくれた。monopo が2年間で成長したのと同じくらい, 僕は成長できただろうか。メンバー全員への感謝の気持ちが尽きない。

monopo でしてきたこと

事務所では主に CI やロゴデザインを担当していた。とりわけストーリーやコンセプトをベースとした CI/ロゴデザイン, および CI/ロゴを起点として展開可能なデザインの制作に注力してきた。

この2年間に制作したほとんどのCI/ロゴはストーリーやコンセプトをベースにしてデザインされている。これは見た目のデザインよりも深い, 芯になる部分からクライアントと繋がりたいと願ったからだ。

キュレーションアプリ「MERY」の新ブランド・ロゴデザインでは, たくさんの女性が世に出たロゴを愛してほしいという思いを込めて “MERY Go Around” というコンセプトのもと制作を進めた。

MERY のロゴは非ウェブ的だ。デザインのシンプル/ミニマル化がトレンドになっている今, それは時流の逆行だと思われるかもしれない。しかし同サービスは昨年末に全国TVCMを放映し, 3月には雑誌「MERY magazine」の創刊が予定されている。1月には「My Little Box」とコラボレーションしたリボンブレスレットも登場している。このようにWeb外での露出が増えたとき, “Webサービス” ではなく “ブランド” として輝くようなロゴにしたいと考えた。これから MERY がどのように展開していくのか, ロゴを制作させていただいた身としてもとても楽しみだ。

コンセプトを考えることは決して楽ではない作業だった。筋道が立つように入念なリサーチもしなければいけない。当初の目論見が見当違いだったり, コンセプトとデザインが結びつかず振り出しに戻ることもあった。それでもこの2年間, ストーリーやコンセプトをベースにしてロゴデザインを続けられたのは, それによってデザインの強度が高まることを身をもって実感したからだ。コンセプトをプロジェクトの下地にすることで, クライアントと見た目以前の話をする機会が増えた。デザインを決定する際に見た目と同じくらいコンセプトとデザインの結びつきに重きが置かれるようになった。ロゴデザインにしっかりとコンセプトを結びつけることができれば, Webサイトや名刺, ステーショナリーなど他の制作物にもその概念を適用することができる。この下地を作り, その上に様々な要素を組み上げていくという作業が本当に楽しかった。

これから何をするのか

2月からは「MERY」を運営する peroli に入社する。

monopo で2年間してきたことはブランドの土台を作り, 初速の打ち出し角度を考える仕事だった。瞬間的インパクトに耐えることを考える仕事だった。

しかし, ブランドづくりには瞬発力だけではなく持続力が不可欠だ。初速で持続性のあるデザインを作ることも大切だが, 作った土台を磨いたり, 広げたり, 高くしたり…抽象的な表現になってしまったが, 初速の勢いが長く滑らかに続いていくような取り組みをしていかなければならない。だから土台作りの次は中長期的な視野を持ったブランドづくりをしたいと思った。

初出社もまだなので多くは語れないし, 正直に告白するとデザイン事務所から事業会社へ行くことへの不安も感じている。それでもやるべきこと/やりたいことを考えると心が躍る。

僕は2年ごとにデザイナとしての自身のキャリアを見直すことにしている。フリー・マガジンを作っていたころ, フリーランスとして活動していたころ, monopo で働いていたころ, そして今回の転職。

「僕がデザインをするのが好きな理由」
ひとことでは答えられない。だけどこうしてキャリアについて変えていると, そのたびにデザインの新たな面白さ・奥深さと出会い, デザインのことがもっともっと好きになっていく。僕はこんな気持ちを他で体験したことがない。(可笑しな日本語だけれど) だからこそデザインをすることが好きなのだと思う。

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TAKAYA OHTA

DESIGNER / Art Director : 沖縄県出身, 県立コザ高校, 立教大学経営学部, 今はデザインをする仕事をしています。 趣味は欧文書体の収集です。: http://TAKAYAOHTA.com